▲今日は何しに宮崎へ!▲

宮崎県内に観光や仕事、キャンプなどで来られた方々に素直な感想を 聞いています 。【宮崎】に来られる方が参考になればうれしいです。。不定期で県内各地のことも紹介します。

ニシタチ物語(4)

『進む浄化』
居心地良さ求め一丸

「40年近い警察人生の中でも、あの2年間は特に大変だった」。宮崎北署の鳥井宏一署長(58)は、ニシタチは前線基地・同署橘通交番に勤務していた1985(昭和60)年当時を振り返る。

夜間の忙しさは県警随一と言われる同交番。飲食店からみかじめ料を巻き上げ大手を振って歩く暴力団、絶えない酔客同士のけんか---。
年末には応援も含めた警察官20人全員が出払うこともあった。身長180㌢、体重90㌔の機動隊上がり。体力に自信はあったが「週末の夜勤前になると胃が痛んだ」。
あれから30年。署長として県内最大の歓楽街をあずかる立場になり、気付いたことがある。
「路上で酔った女性が寝ていても、何事もなく周りが通報してくれる。過ごしやすい街になった」。

私服警察官による巡回を強化するなど署を挙げてニシタチの治安維持に取り組むが、「通りの方々の努力あってこその変化だろう」と感謝する。


2000年代初めのニシタチは、人によっては居心地の悪い街だった。露出の多い女性の写真とともに、性的好奇心をあおる言葉をプリントした「ピンクちらし」の配布が横行。性風俗店などのしつこい客引きや、ラウンジなどで働く女性をスカウトするための声掛けが日常だった。

「これじゃ、人を連れて来られないよ」。西橘通りにスナック「夕鶴」を構え、県社交飲食業生活衛生同業組合宮崎支部長を務める矢野和昭さん(66)は、常連客の言葉を鮮明に覚えている。温かい街の雰囲気が失われることを危惧した矢野さんら飲食店主有志らは一念発起する。

昭和60年代から暴力団追放など街の浄化へ向けて協力してきた店主らは、市や市議会議員、県警に対策を要望。05年にわいせつなチラシ配布を禁じる市の新たな条例が、10年には客引きの規制を強化した県の改正迷惑防止条例が施行されることになる。
「街を守るのも飲食店の役割」。矢野さんらは今も、県警と連携して街を毎年巡回。暴力団の追放や飲酒運転の撲滅を呼び掛け続ける。

こうした取り組みもあって、昨年の橘通交番管内が刑法犯認知件数は268件で10年前から3割近く減少。
風営法に違反する時間外営業や、通りの統一感を乱す派手な看板など課題は残るものの、誰もが安心して楽しめる街へ一歩ずつ近づいている。

ニシタチ愛好家でつくる異業種交流会・宮崎燦々会は3年前から毎年1回、通りを清掃している。会長を務める会社員の高橋俊一さん(64)は年々少なくなるごみの量に「街の雰囲気が良くなったことで、飲む人の気持ちにも変化が起こっているのではないか」と感じとる。
「今のニシタチなら、誰にだって自信を持って紹介できる。どうか、ずっとそうあってほしい」。高橋さんの願いは、この街を愛する全ての人の願いでもある。

ーシリーズ続くー。